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最高裁判所第一小法廷 昭和45年(し)90号 決定

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣意は、判例違反をいうが、所論引用の名古屋高等裁判所昭和三〇年一月一三日決定(高等裁判所刑事裁判特報二巻一・二・三合併号三頁。所論に一月二三日決定とあるのは誤記と認める。)および福岡高等裁判所同年七月一二日決定(高等裁判所刑事判例集八巻六号七六九頁)は、いずれも併合罪の関係にある数個の起訴事実のうち一部の事実についてのみ勾留状が発せられている場合において、いわゆる権利保釈事由または保釈取消事由の存否は勾留状の発せられている事実について決すべきである旨判示したものであるところ、原判決の判示するところによれば、本件は包括一罪をなすと認められる事実のうち一部の事実について勾留状が発せられ、起訴されているというのであるから、所論引用の各判例は事案を異にし、本件に適切でない。論旨は、前提を欠き、刑訴法四三三条一項の抗告理由にあたらない。

よって、同法四三四条、四二六条一項により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 岩田 誠 裁判官 入江俊郎 裁判官 長部謹吾 裁判官 大隅健一郎 裁判官 藤林益三)

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